話があると言われたから来たのに、彼、なかなか用件を切り出さない。
握りしめたこぶしをテーブルに置いたまま、何だかいつもの優しい彼とは別人みたい。
「オレ・・・ルックスもイケてないし、不器用だし、将来のことも良くわからない」
急にどうしたの?
私はなぜかさっきから、握りしめすぎて赤くなった彼のこぶしが気になってしょうがない。
「こんな俺だけど・・・」
そう言って彼は、私にこぶしをぐいと差し出した。指をひらいた厚ぼったいてのひらには、小さな指輪が乗っている。
私は思わず笑ってしまった。
だってこういうものは、普通きれいな箱に入れて、ふたをひらいて渡すものよ。
いつから握りしめていたのかしら。指輪から湯気がたちのぼっているみたい・・・
私は、うなずいて、ほっかほかの指輪を手に取った。


[END]
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